島根県には、美しい自然に育まれた豊かな食材と、
長い歴史の中で受け継がれてきた独自の文化があります。
島根県出身者の方にとっては、小さいころから慣れ親しんだ郷土の味として。
旅行者の方にとっては、島根を訪れた際にぜひ味わっていただきたい島根の味をご紹介します。
出雲そば
香り高く風味豊か、のどごし最高。
割子(わりご)と釜揚げ
出雲そばの最もポピュラーな食べ方、それは「割子」と「釜揚げ」です。
「冷たいのにする?それともあったかいのにする?」
そば店で大将からそんな声をかけられたら、冷たいのが割子、あったかいのが釜揚げと心得ていただくとよいでしょう。
割子は、朱塗りの丸い器に盛られたそばに刻みねぎ・削り節・もみじおろしなどの薬味を載せ、その上からつゆを回しかけて食べます。
釜揚げは、茹で上がったそばをそば湯ごと器に盛り付け、そこへつゆをかけて食べます。
そばの成分が溶け込んだそば湯はアツアツでトロリと濃厚、健康にも良く、特に寒い冬には身体が温まる食べ方です。
いずれも出雲そばならではの特徴的な食べ方で、島根へ旅行に訪れた際には必ず味わっていただきたい島根の味です。
しじみ
濃厚な旨味と健康パワーで大注目!
日本有数のしじみの産地・宍道湖で採れる大和しじみは、とにかく大粒で旨味が濃厚。
海水と淡水が混じり合う汽水湖である宍道湖では、絶えず変化する水の塩分濃度に適応するためにしじみが内臓を発達させることで、その旨味成分「コハク酸」が増すのです。
旨味をたっぷり含んだしじみから出る出汁は格別。
味噌汁の具に使えば、しじみのエキスが汁に溶け出して、身体に染み込むような美味しさです。
特に、二日酔いの朝などに身体の調子を整えてくれる効果にも注目が集まっています。
しじみの健康パワーの正体は「オルニチン」。
旨味と健康成分の両方を豊富に含んだ宍道湖しじみは、島根を代表する名産のひとつです。
大粒だからレシピ広がる
しじみと言えば「しじみの味噌汁」にしていただくのが最も一般的ですが、宍道湖産のしじみはなんといってもその粒の大きさが魅力。
大きさ(殻の厚み)によってSサイズから2Lサイズまであり、調理方法に合わせて大きさを選ぶのがよいでしょう。
味噌汁用であれば、Sサイズでも十分。
大粒を購入した場合は、ぜひ酒蒸しや炒めものなどにして、貝の旨味と歯ごたえを楽しんでください。
便利な冷凍・真空パックも
ご家族の健康管理のために、毎朝美味しいしじみの味噌汁が味わえたら理想的。
でも生物だと日持ちが心配ですし、少量だけ使いたいときに不便ですね。
そこでぜひおすすめしたいのが、冷凍しじみ。
生鮮品より風味が劣るかと思いきや、旨味成分は冷凍することで増加するのです。
または常温保存できる、加熱処理済しじみの真空パック商品もおすすめ。これなら手軽にしじみを食卓に取り入れられるので、贈答品にも喜ばれます。
蒲鉾(かまぼこ・野焼き)
島根で愛され続ける味、あご野焼。
「あご」とは飛魚のこと。
「あごが落ちるほど美味しい」ことから、あごと呼ばれるようになったという言い伝えもあります。
島根では古くから飛魚を食す習慣があり、刺し身や、すり身を使った蒲鉾、天ぷら、料理のだしなど、様々な方法であごの美味しさを味わってきました。
中でもこの「あご野焼」は、太いちくわのような見た目をしており、島根の食卓に当たり前に並ぶおなじみの食品として、島根県民なら誰しも慣れ親しんだ味です。
香ばしい皮、プリプリとした歯ごたえ、ほのかに鼻を抜ける酒粕の香り。
子どもから大人まで、幅広い世代に愛され続ける山陰の味です。
お茶うけに、酒のつまみに
お茶処で知られる松江などの島根県内各地では、朝食や夕食などの食卓に並ぶのはもちろんのこと、不意の来客があった際のお茶うけなどにも、あご野焼きをサッと切り分けておもてなしすることがよくあります。
また、晩酌のお供にも最高。
酒粕を使っているものが多いため、ビールや日本酒との相性も抜群です。
わさび醤油をつけていただくのもまた美味です。
気の利いた季節商品も
おみやげにも大変喜ばれるあご野焼ですが、ちょっとした使い物や大切な方への贈答品にもおすすめです。
例えば春の季節には、桜の名所・雲南市木次町の桜の花を塩漬けにしたものを練り込んだ「桜かまぼこ」入のギフト商品を贈るのも素敵ですね。
県外の方にとっては「飛魚のかまぼこ」自体珍しいものなので、贈り物にもぴったりです。
和菓子
全国有数の和菓子処・松江
江戸時代から城下町松江で発展した茶の湯の文化。
当時の松江藩七代藩主、松平不昧公が築き上げた「不昧流」茶道が根付いていく中で、茶会に用いられた和菓子の文化も同時に発展していきました。
そのため松江市内には今でも多くの老舗和菓子店が存在し、茶の湯を楽しむ文化が色濃く受け継がれています。
改まったお茶席で和菓子をいただくだけでなく、日常生活の中でも気軽にゆったりとお茶を飲みながら、和菓子をいただく習慣があります。
色とりどりの美しさ、上品で奥ゆかしい甘さ。
芸術品ともいえる松江の和菓子の数々を、ぜひ味わってください。
「不昧公好み」三大銘菓
不昧公が特にお好みであったとされる「若草」「山川」「菜種の里」は三大銘菓とされており、複数の和菓子店で当時の味を再現しつつ、独自のお菓子として販売されています。
このほかにも、じょうよう饅頭、落雁、練りきり、錦玉羹など、多くの種類の美しい和菓子があります。
ショーケースに色とりどりの和菓子が並ぶ様子は、和菓子処松江ならではの情緒ある風景です。
四季折々の味を贈る
和菓子の魅力のひとつに、春夏秋冬の移り変わりをお菓子を通じて表現できる点があります。
春は桜、夏は涼し気な羊羹、秋は柚子や栗、冬は正月の迎春用菓子と、季節限定で販売される銘菓も多く、四季折々の風物詩として楽しむことができます。
ちょっとした手土産や贈り物を選ぶ際も、その時期ならではの季節の和菓子を選べば、贈り手の豊かな心を表現することができ、相手に喜ばれるでしょう。
米(仁多米)
東の魚沼コシヒカリ、西の仁多米
豊かな土壌と水源に恵まれた仁多郡奥出雲町は、米作りに最適な土地です。そこで生産されるコシヒカリのブランド米が仁多米です。さまざまなコンクールで受賞歴があり、「東の魚沼コシヒカリ、西の仁多米」と言われるほど、全国的に高い評価を得ています。
仁多といえば仁多牛という和牛の産地でもあり、牛糞堆肥を利用した有機製法や、昔ながらの循環型農法を行っている農家が多いのが特徴です。
地域が一丸となって安心・安全な米作りと和牛の飼育を行っており、平成15年度には環境保全型農業推進コンクールで農林水産大臣賞を受賞しました。
旨さの秘密は寒暖差とミネラル
仁多米はもちもちした食感でありながら、一粒一粒がしっかりとした歯ごたえで味のバランスがよく、米そのものの旨味と甘味を味わえるお米なので、白ご飯やシンプルな塩むすびでいただくのがおすすめです。
また、和洋中どんなおかずとも相性が良く、それぞれのおかずの味を際立たせてくれます。
さらに仁多米は冷めると粘りと甘味が増すという特徴があるので、お弁当に使うのもおすすめ。
美味しいお米を作るためには、昼間に光合成ででんぷんを作り、夜に蓄えるかたちを作るのが理想ですが、夜の気温が高いとでんぷんがお米に蓄えられる量が減ってしまいます。
昼夜の寒暖差が激しい仁多地方では、お米がたくさんのでんぷんを蓄えることができるため、美味しい仁多米が育つのです。
しまね和牛
味・食感・風味すべて格別
しまね和牛は、(社)日本食肉格付協会の定める肉質等級で、4等級・5等級の最上級評価を受けた黒毛和牛です。 島根の山間地域の豊かな自然の中で大事に育てられた選りすぐりの牛肉は、味・食感・風味すべて格別。
脂には風味のよいオレイン酸が含まれており、しつこさを感じることがありません。ご高齢の方でも美味しく召し上がれます。雑味の少なさと程よい脂の量と質が美味しさの秘密です。
他の和牛との大きな違いは、とろけるような柔らかさと旨味を長く感じられること。 特に赤身肉の旨さには定評がありますが、霜降りの風味豊かな味わいもお楽しみください。
肉の旨味をそのまま味わう
しまね和牛は、肉の旨味をそのまま味わえるシンプルな調理方法が一番。ステーキや焼肉も良いですが、軽くあぶって握りずしにして食べると、大トロにも似たジューシーな味わいです。
ステーキ用にはロースを、焼肉用にはロースと脂肪分の少ないモモがおすすめです。
調理の際は、肉の持つ水分が出ていかないように塩を最後に振って、柔らかさをキープすることでより美味しく召し上がっていただけます。
しまね和牛の歴史
出雲地方や石見地方は古来より、良牛の産地として知られてきました。たたら製鉄がさかんだった町で、荷物の運搬方法として牛が重宝され、牧畜が行われるようになったのが始まりです。
時代の流れとともに、和牛は食用としてのニーズが高まり、改良を経て現在のしまね和牛が誕生しました。
今では、内閣総理大臣賞や農林水産大臣賞を受賞するなど、全国でも高い評価を得ています。
一夜干し
獲れたてをその日のうちに加工
日本海側に面した島根では、バラエティ豊かな海の幸が獲れます。中でも有名なのが高級魚・のどぐろ。“白身のトロ”と呼ばれるほど脂がのった魚です。
島根では、早朝に漁に出かけその日のうちに獲れた魚をセリにかけるタイプの漁が盛んです。獲ったその日のうちに加工することもできるので、鮮度・品質が違います。脂ののりはそのままに、肉厚でぷりっとした食感です。
一夜干しは、日光に当てない製法のため、身が酸化することなく旨味が凝縮されます。
日陰に干すことで水分が身の中に閉じ込められるので、普通の焼き魚よりもみずみずしい食感になるのがポイントです。
大きいものほど美味しいのどぐろ
のどぐろの正式名称は「アカムツ」という魚で、のどが黒いことから「のどぐろ」と呼ばれるようになりました。
のどぐろが獲れるのは島根~新潟の日本海側ですが、島根県浜田市が有名な産地の一つ。旬は秋から冬にかけてと言われており、脂ののった大きいものほど美味しいと言われています。
以前は産地周辺や一部の高級料亭でのみ食べられていましたが、最近はその知名度が上がったこともあり、さまざまな場所で食べられるようになりました。
保存は冷凍で旨味を逃がさずに
ご贈答用には、のどぐろだけでなく、甘鯛、カレイ、真鯵、エテカレイ、あじ、するめいか、はたはたなどの一夜干しのセットもあります。見た目も華やかで、さまざまな海の幸を味わっていただけます。
調理方法ですが、一般的に干物は冷凍で保存し、焼く時は解凍せずに凍ったままのものを焼いたほうが美味しく焼き上がります。
のどぐろやカレイは、素焼きにして素材の味を楽しんでください。スルメイカやアナゴ、ふぐは唐揚げや天ぷらなどにしても美味しく召し上がっていただけます。
十六島のり
生産量が少ない希少なのり
十六島(うっぷるい)のりは、出雲市北端の十六島鼻と呼ばれる岬周辺で、12月~2月ごろまでの短い期間のみ獲れる貴重な海苔です。
強い磯の香りと独特の濃い味わい、コシのある食感が特徴で、約1300年に完成したと言われる「出雲国風土記」にも記述があるほど歴史のある出雲の名産品で、朝廷や将軍家にも献上されていました。
しかし、生産量は少なく獲れる期間も短いので、地元の人でも口にできる機会は多くありません。近年は、温暖化でますます希少になっています。
邪気を祓う縁起の良い食べ物
この十六島のりを使った料理としてよく紹介されるのがお雑煮です。
昔から邪気を祓う食べ物として重宝されているので、地元・出雲の人はお雑煮に入れてお正月に食べるのが習慣になっています。出雲風のお雑煮は、飛魚だしをベースにすると簡単に美味しく作ることができます。
その他、てんぷらにしたり、茶わん蒸しに入れたり、お茶漬けやお蕎麦に入れたり……と様々な楽しみ方ができます。
焙りの十六島のりは、そのままお酒のおつまみとして召し上がっていただいても美味しいです。
豊富なたんぱく質とミネラル
十六島のりは、岩場に生えた天然の海苔を「しまご」と呼ばれる人たちが手作業で収穫します。
岩のりと呼べるのはこうした自生の天然のりだけで、養殖したものは「岩のり」とは呼びません。
天然物だからこそ、栄養素が高いことも魅力の一つ。
ミネラルの豊富さはもちろんですが、たんぱく質も多く含む海藻類です。
汁物にそのまま入れると、簡単にその風味を味わうことができますが、和洋中どの料理にも合わせやすいので、さまざまな料理に応用してみてください。
※十六島のりは生産時期・生産量が限られるため、当店でも取扱い時期が限られます。十六島のり商品の在庫がない場合もありますので、あらかじめご了承ください。
銘茶
作法にとらわれず楽しむ島根の茶道―不昧流
島根県の県庁所在地・松江は茶処としても有名です。
和菓子の項でも紹介していますが、松江藩七代藩主・松平治郷(不昧公)は、大名茶人として有名でした。十代の頃から茶道を嗜んできた不昧公は、不昧流と呼ばれる茶道流派を現代に残しました。
その特徴は、作法にとらわれずお茶を楽しむこと。今でも茶文化が盛んな松江では、普段から抹茶をいただく習慣が残っている数少ない地域で、小さな子どもから大人まで作法にとらわれずお茶に親しんでいます。
皆さまも、細かいお作法は気にすることなく、お茶そのものの味わいを楽しむ不昧流を日々の暮ら しに取り入れてみませんか。四季折々の和菓子とセットで、お召し上がりください。
苦みが薄くまろやかな甘みの島根産銘茶
茶処・島根では、江戸時代から茶の栽培が行われ、今では出雲地方を中心に良質な茶葉が生産されています。島根産のお茶は煎茶と番茶が多く、伯太茶・伯太番茶や出雲茶が全国的に有名です。
伯太茶は苦みが薄くまろやかな味わいの煎茶で、伯太番茶はカフェインが少なく小さいお子様にもおすすめ。二番、三番煎じでもおいしいのが、島根のお茶の特徴と言われています。
また、島根独特の茶文化の一つに「ぼてぼて茶」があります。これは泡立てた番茶に、煮豆や漬物、ごはん、高野豆腐などを入れたもの。不昧公の時代の非常食だったと言われており、お箸を使わずに茶碗の底をたたきながらお茶漬けのようにいただきます。他の地域ではちょっと見られない、独特の味わいです。島根の番茶とお好みの具材でお試しあれ。
出雲そばの特徴は、まずはその色の濃さ。
そばの実を殻ごと挽くため、やや黒っぽい色をしています。
それだけにそばの風味もしっかりと感じられ、非常に豊かな味わいです。
そばつゆもまた特徴的で、店ごとに味の差はあるものの、全体的にまろやかで甘めのつゆが主流です。
出汁には鰹節、いりこ、あご(飛魚)など、店ごとにそれぞれこだわりの素材を使っています。
地元の人々ももちろん、出雲そばが大好き。
近所のスーパーマーケットで手軽に生蕎麦を購入して、家庭でも楽しみます。
多くの島根県民には好みによって「ここの店のつゆが一番」という贔屓のそば店があったりするものです。